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第4回珍味川柳入賞作品発表

応募作品 ペンネーム又は本名
大賞 エンドレス 美味い珍味と 妻の愚痴 酒乱Q
優秀賞 からすみを 父はチビチビ 子はパクリ よすけ
優秀賞 禁煙の 口に珍味が しみわたる シオマネキ
佳作 ノーベル賞 珍味部門も あればよい 卑弥呼
佳作 着飾った 珍味が届く 誕生日 ゆとり路
佳作 ふるさとは 遠し珍味で 懐かしむ 佐藤春夫命
佳作 食卓の 珍味が癒す すきま風 風水
佳作 初対面 珍味取り持つ 旅の縁 お多福豆
佳作 珍味食う 口は急には とまらない 中年やまめ
佳作 珍味には その地の文化 知恵の味 よし得
佳作 猛暑など 酒と珍味で 飲み下す 松崎俊道
佳作 団子より 珍味がいいと お月さま 浜ぶどう
佳作 出身地 問われて胸を 張る珍味 満風

応募総数 1263句
入賞作品 13句

選考委員会の講評

~珍味+人間味~
第4回の「珍味川柳」から、故今川乱魚先輩の後を受けて選考委員長を務めることになりました。よろしくお願いいたします。珍味と酒が大好きで、生唾を飲み込みながらの選考でした。
今回の投句数は前回をやや下回りましたが、それでも1263句に及び、珍味への関心の高さを感じました。応募作品の質も高く、佳句秀句が多くて選考に嬉しい悲鳴を上げました。また、作品の傾向として珍味そのものを詠んだものだけでなく、そこに人間味を加えて味を増した作品が多かったことが挙げられます。
大賞の「エンドレス美味い珍味と妻の愚痴 酒乱Q」がまさにそうした作品の一つで、「美味い珍味」に「妻の愚痴」を加えてその共通点を「エンドレス」でまとめた点が優れています。今流行りの「整いました」ですね。食べ出したら止まらない珍味の美味しさが、これまた始まったら止まらない妻の愚痴というノーサンキューの相反する情況で強調されています。
優秀賞の「からすみを父はチビチビ子はパクリ よすけ」も「からすみ」に父と子の食べ方の違いを絡ませて、心理状態を上手く表現しています。「チビチビ」と「パクリ」の対比も効果的です。からすみは決してケチでチビチビ食べるのではないのですが、やはり高価というイメージもあり、そんなことはお構いなしに美味い物は美味いとばかりパクリと食べる子にハラハラする父の気持ちが手に取るように伝わってきます。
もう一つの優秀賞の「禁煙の口に珍味がしみわたる」は、タバコの大幅値上げがあったばかりというタイミングの良さも手伝って、禁煙の経験者に共感を呼ぶばかりでなく、タバコを吸わない人にも同情的共感を呼ぶ作品になっています。私も酢昆布やスルメで口を慰めたものでした。下五の「しみわたる」にペーソスも感じます。
佳作にも「休肝日と珍味」「着飾った珍味」「急には止まらない口」など表現にも内容にも味のある作品が見られ、また、旅や今年の猛暑に上手く絡めた作品にも惹かれました。
次回にどんな珍味川柳が寄せられるか、今から楽しみにしています。以上。
講評 (社)全日本川柳協会理事 津田 暹