第17回珍味川柳入賞作品発表
賞 | 応募作品 | ペンネーム又は本名 |
---|---|---|
大賞 | ストレスを初期化したくて噛むスルメ | つべる |
優秀賞 | 美味すぎて食品ロスのない珍味 | 竹林 |
優秀賞 | ほろ酔いの路地に聞こえる八代亜紀 | 千流 |
佳作 | 自由研究珍味の歴史孫の夏 | ふむふむ |
佳作 | ハッシュタグ珍味をつけて食べ比べ | 恵子 |
佳作 | 珍味食べ塩分補給する猛暑 | おきょう |
佳作 | 珍味ってお酒とすごく密なので | 瑠珂 |
佳作 | 留学中胃文化交流するCHINMI | 奥野細道 |
佳作 | 美味かったくさや隠してマスクする | あら松 |
佳作 | AIに珍味の良さは分かるまい | takudream |
佳作 | 噛むために入れ歯直して珍味喰う | ハルル |
佳作 | 初めての珍味に孫がコレヤバイ | すみれ |
佳作 | からすみをパスタに変える嫁が来た | ルーク |
応募総数 3,455句
入賞作品 13句
■選考委員会の講評
味わい深き珍味と珍味川柳
江畑 哲男
昨年に引き続いて、珍味川柳の選に関わらせていただきました。厳正にかつ楽しく、皆さんの力作を拝見いたしました。
最終選考の場で、ある審査員が思わずこうつぶやきました。「(こんな風に秀句を読んでいると)お酒が飲みたくなりますねぇ~」。一同、ニンマリ(笑)。ややあって、共感のうなずき!
そうなのです。良い句は人の心に響くのです。共感を呼ぶのです。そんな味わい深い作品が今年もたくさん寄せられました。応募総数3455句、有り難うございました。
入選作品をご覧下さい。
どの川柳も光っていませんか? 日常生活の中に珍味が根づいているように、珍味川柳もまた日常生活から生まれた佳句なのです。「あるある」「わかるわかる」「ナルホド」「上手いなぁ~」、そんな感想が聞けるものと信じております。題材も表現もバラエティーに富んだ入選作を並べることができました。どうぞ、ご賞味下さい。
大賞作品及び優秀賞作品については、もう少し深掘りをしてコメントを付けさせていただきました。こちらもご鑑賞下さい。
《大賞作品》
「ストレスを初期化したくて噛むスルメ」(つべる)
現代はストレス社会とも言われております。個人的にも、公私・大小・硬軟さまざまなストレスを抱えていることでしょう。
そうしたストレスを「初期化」できたら、最高です! スカッとします。心が晴れ渡りますよね。大賞句の作者は、「初期化したくて噛むスルメ」と詠みました。「ストレス」と「初期化」(パソコン用語)のマッチングがいかにも現代的で、すばらしい大賞作品となりました。おめでとうございます。
《優秀賞作品》
「美味すぎて食品ロスのない珍味」(竹林)
大きくて難解なテーマを取り上げました。飢餓に苦しむ民がいる一方で、膨大な食品ロスに悩む我らが地球。作者はこの難題を、ユニークに、軽やかに、川柳的に消化しています。たしかに、珍味には「食品ロス」がありませんよね。珍味の「美味」を強調しつつ、「食品ロス」というテーマに挑戦したところが作者のお手柄と申せましょう。
《優秀賞作品》
「ほろ酔いの路地に聞こえる八代亜紀」(千流)
こちらは一転して、庶民的な一句。演歌が聞こえてきそうですね。八代亜紀という固有名詞を使いました。この場合、ぴったりではないでしょうか。
川柳では口語(=話し言葉)を用います。文語(=書き言葉)ではなく、ふだん使っている言葉で喜怒哀楽を言い表します。分かりやすい言葉を使いながら、滋味深い心情を盛り込むことができたらしめたものです。この作品は親しみやすさの代表のような1句となりました。
(一般社団法人・全日本川柳協会副理事長)