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第16回珍味川柳入賞作品発表

応募作品 ペンネーム又は本名
大賞 夕刻の新幹線は珍味臭 藤井京子
優秀賞 ロシア産キャビアで平和考える やじろべー
優秀賞 珍味食う合い間合い間のテレワーク 中年やまめ
佳作 ミックスナッツどれにしようか迷う指 あさか舞
佳作 珍味こそダイバーシティそのものだ ハミング
佳作 言えないが妻の料理はみな珍味 策々
佳作 珍味だけ黙って俺の愚痴を聞く オカメインコ
佳作 SUSHI・MANGA次はCHINMIが世界語に 猫背
佳作 おせちには世界平和がつまってる
佳作 密ですと珍味が叫ぶ冷蔵庫 扇風機
佳作 こそこそと食べる珍味がまた美味い ギャロップ
佳作 AIも勝てぬ珍味の奥深さ もえぴーの夫
佳作 一駅ごと裂きイカ噛んでコップ酒 角田 創

応募総数 3,611句
入賞作品 13句

選考委員会の講評

川柳という滋味・珍味

江畑 哲男

いやぁ、楽しい選をさせていただきました。楽しかった最大の理由は、何と言ってもユニークな作品が多かったことにあります。たくさんのご応募、有り難うございました。

川柳は「共感の文芸」とも言われます。「うんうん」、「わかるわかる」、「ナルホドねぇ」といった要素が求められます。言わば、「大衆性」と「文芸性」。この二つが求められるのです。別の言い方をすれば、「面白くて奥が深い」ということにもなりましょうか。

今回の入賞作には、その共感性の要素がとくに目立ちました。「大衆性」と「文芸性」の二つが兼ね備わっていた作品が多かったのです。噛めば噛むほど、味わえば味わうほど、「滋味」や「珍味」がにじみ出てくるようでした。

まずは、大賞作品「夕刻の新幹線は珍味臭」。描写の力が群を抜いておりました。まとめ方が上手です。手慣れております。下五の体言止め、その座りもまたすばらしく、安定感がありました。大賞にふさわしい文芸性を備えた逸品でした。

優秀賞二句。

「ロシア産キャビアで平和考える」。いわゆる時事川柳ですが、時事はこう詠んで欲しいものです。食品から今回の侵攻を捉えています。この点が作者のお手柄でした。世界情勢は身近にあると、教えられた気がします。

「珍味食う合い間合い間のテレワーク」。コロナ下の日常生活をユーモラスに表現しています。「合い間合い間」に「食べる」のではなく(笑)、「合い間合い間」は「テレワーク」だったのです。その「合い間合い間」というリフレインも効果てきめんでした。

このほか、政治・文化・経済など、幅広い題材を川柳にまとめてくれました。有り難うございます。

佳い作品は共感を呼びます。どうぞ、入選作品の「滋味・珍味」を存分に味わってください。

(一般社団法人・全日本川柳協会副理事長)